皆様から寄せられた署名は、法改正が国会にかかる時期を見てとりまとめ、国会議員の紹介を経て、衆議院・参議院の議長宛に請願として提出されます。
請願署名提出の手続きは、以下のようになっています。
●請願制度
請願は、憲法で保障されている国民の基本的権利の一つで、国民が国政に対する要望、苦情等を直接国会に述べることができます。日本国籍を持つ者、日本国内に在住の外国人なら誰でも提出できることとされています。
※憲法第16条
「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」
※請願法(昭和22年3月13日 法律第13号、昭和22年5月3日 施行 )
なお、参議院と衆議院とは、それぞれ別個に請願を受け付け、審査されることになります。
●請願書の書き方
請願は、要望する内容を簡潔にまとめた文書(署名用紙)に、請願者の住所(住所のない場合は居所)・氏名を明記した書面によって行われます。請願者の氏名は自署によることが原則ですが、場合によっては代筆も可能です。ワープロなどで印刷された文字を使った場合は押印が必要とされています。また、外国語や点字などで書かれた場合には、翻訳文を添付します。
●請願できる期間
請願は、国会の会期中、召集日から会期の終わるおおむね1週間前までの間、いつでも提出できます。ただし、請願の案件がすでに当期国会で審議されて通過した法案である場合は、受理されない場合もあります。
●請願書の提出
国会への提出は、議員の紹介が必要です。提出に関する具体的な手続は、議員ないし議員秘書が行います。
請願者は1名でも可能で、請願者は1名でも10万人でも同じ一件として取り扱われます。ただし、同じ請願者が、同一会期内に同一趣旨の請願書を重複して提出することはできません。しかし、請願者が異なっていれば、同一内容の請願をいくつ出してもよく、例えば1万名の署名簿を請願代表者100名にわけて100件として出すことができます。この場合、種類は1件です。
●紹介議員
請願署名を受け取った議員が、趣旨に賛同していただいた場合は自分の名前を紹介議員名として署名し、参議院・衆議院の各請願課に提出します。
案件によっては、議員は自分が所属する政党の政務調査会等に紹介し、党として請願を受けるかどうかの判断を受ける場合もあります。政治的に論議のある案件については、議員個人が賛同であったとしても、党としては受けられないという「党議拘束」がかけられる場合もあります。
●委員会に付託
請願課は、受理した請願書の文体を公文書スタイルに書き換え、請願のタイトルを付けて、その趣旨、請願者の住所・氏名、紹介議員名などを記載した請願文書表を毎週作成し、関全議員に配付します。
また、請願課は、請願の趣旨に応じて、いずれかの常任委員会または特別委員会に付託します。動物愛護法に関する請願は、環境委員会に付託されることになります。
※不適正行政により具体的な権利・利益の侵害を受けたとして、その救済を求めることを内容とする請願(苦情請願)については、行政監視委員会に付託される。
●請願の審査
付託を受けた委員会では、付託された請願について審査を行い、採択すべきかどうか決定します。一般に、請願は法案の審議が終了する会期末頃に、委員会にかかることが多いとされます。
衆議院には毎年、多数の請願が出されていますが(同じ内容のものが多い)、厚生労働、文部科学にかかるもので請願の大半を占め、なぜか環境委員会にかかる請願の数は少ない状態です。
●審査の結果
法制度上は、請願は各委員会で採択か不採択かを決定されることになっていますが、慣例的に不採択はこの40年間、一度もないとのことです。実質は「不採択」であっても、名目上は保留扱い(審議をしない、棚上げ)として、国会の会期終了に伴い「審議未了」となるケースが多いとされます。
●請願の採択
委員会で採択された請願は、内閣に送付することが適当か否かをそれぞれ決定し、議長に報告されます。議長は、これを本会議に諮り、採択された請願のうち、内閣において措置することが適当とされたものは、内閣に送付することになります。
●内閣処理経過
内閣からは、毎年おおむね2回、その処理経過について報告が行われます。
●請願状況の公表
国会にかかった請願の表題は、採択、審議未了を含め、すべてインターネットで公開されています。
請願が採択されても、残念ながらこれを立法化する等の法的根拠はありません。しかし国会で認められたことを行政機関は完全無視はできないとされ、何らかの対処を促す力となります。
また、採択されなくても、さらに継続して請願を行い、議員に問題を認知してもらうよう努力していくことも大切です。