<ALIVE意見全文>
(1)深夜の生体展示規制
- 離乳後間もない、生後数週間の幼齢動物は、一般的に一日十数時間の睡眠を必要とする。長時間の展示による睡眠不足は、心身の成長に支障をきたす恐れが大きい。また、昼行性の動物を深夜に展示することも、同様に心身に支障をきたす。これら動物への重大なストレス、及び、心身の成長に影響が出た動物を購入した飼い主の負担を考慮すれば、長時間の展示と深夜の展示・販売は禁止されるべきである。
- 夜間の展示・販売は社会通念上20時までとするべきである。一日の総展示時間は8時間以内とし、その間に必ず1回以上(一定時間以上)の展示をしない休息時間を設けるべきである。
(2)移動販売
- 移動販売により購入した動物が病気になったり死んでしまったなどのトラブルが多発している。幼齢動物を長距離移送することによる心身のストレスも大きく、また多数の客が押し寄せる会場で行う場合が多いため、騒音、熱気、接触などが長時間続く中におかれることになるが、移動販売では一頭一頭の体調管理体制は困難であり、動物福祉の観点から禁止するべきである。
- 移動販売は、イベントとして土日や連休などに行われることが多く、問題があっても行政が巡回監視に行けないという問題がある。
- 現行法では24時間内の営業については登録不要であり、数日に渡る場合でも、休日に行われるイベント会場を行政が事前にチェックして登録手続きをすることは不可能である。事前審査ができない営業形態は禁止とするべきである。
- 移動販売は、売れ残りを販売するためのよい方法だという意見があるが、動物は物ではなく生き物であるので、常に大量に売れ残りが発生するような経営方法を見直すべきである。
(3)対面販売・対面説明・現物確認の義務化
- ペットを売る場合、その動物の習性、成体時の大きさ、飼育方法などの説明義務があるが、インターネット等により対面販売しない場合はそれが不十分である。ホームページ上に掲載したとしても、それを購入者が自ら読まなければ理解はしておらず、動物愛護の観点から充分とは言えない。
- 現物を実際に見ずに購入し、違うものが届いたというトラブルが起こっている。販売に際し、動物の生理、習性、生態等についての説明・確認という最も重要な部分が充分に行えない通信販売は規制し、少なくとも最終的には実際に対面して説明と現物確認を行うようにすることが必要である。
- 様々な野生由来動物がインターネット上で取引されている。野生動物を安易に販売することは、原産国における生息地の破壊や、国内での外来生物問題を引きおこすおそれがあり、生態系の保全の観点からもインターネット取引は禁止するべきである。また生命尊重の観点から、野生動物の乱消費となる安易な飼育を規制するべきである。
(4)犬猫オークション市場(せり市)
- ペットショップで流通する犬猫のかなりの割合がオークション市場を介して仕入れられているという現状がある。そのため、トレーサビリティーができず、購入した犬が病気だったり死んでしまったというトラブルが発生しても、繁殖業者に確認をしたり相談することができない。繁殖業者とペットショップの仲介役であるオークション業者は、その流通のために場所を提供することで対価を得ており、動物取扱業者と同様にペットの取引に責任を持つべき業種であるため、動物取扱業に含めて登録制とするべきである。
- 犬猫オークション市場には、最低限、参加する繁殖業者やペットショップが登録業者であることの確認及びその飼育施設の状況確認と、幼齢動物の取引の規制等ができる仕組みを課すべきである。また、遺伝的疾患については、一定期間が経過してから症状が発症するものも多く、トレーサビリティーを確保する制度も必要である。
- オークション市場で感染症発生を確認した場合、診断をした獣医師に、行政への報告を義務付けるべきである。
(5)犬猫幼齢動物を親等から引き離す日齢
- 早期に親兄弟から引き離したため適切な社会化がなされず問題行動を起こす犬を、飼い主が飼いきれなくなり保健所に持ち込むケースが数多くある。海外の科学的知見や規制の現状を踏まえ、幼齢動物を親兄弟から引き離す日齢を8週齢以降とするべきである。
- 日齢を規制する場合、生年月日を証明できる仕組みが必要である。トレーサビリティを確保し、生年月日のほかにも、両親の情報、兄弟の数、生産者の情報、販売店の情報などが確認できる仕組みをつくる必要がある。
- 犬猫以外の動物についても、原則として幼齢動物を販売しないようにするべきである。それぞれの種について専門的な知見を集めてガイドラインを作るようにしていくことが必要である。
- 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」などを遵守しておらず、適正とはいえない環境で繁殖を行っている動物取扱業者も多い。親等から引き離す日齢を規制する場合、基準を強化して飼養施設を適正化し、心身ともに健康に育つ環境を整えていくことが重要である。
(6)犬猫の繁殖制限措置
- 高い頻度で繁殖させられている犬猫について、母体への負担や健康面への悪影響があることは明らかである。母体となる動物が健康に生きられるよう、最初の繁殖年齢、繁殖回数、繁殖間隔を制限するべきである。犬については、これまで様々な犬種を作り出してきた実績のあるイギリスやドイツにおいて経験から導きだされた規制値を導入することが望ましい。猫についても同様に検討するべきである。
- 繁殖をさせなくなった犬の不法な遺棄や行政への持ち込みが日常的に行われている。また、給餌給水を怠り餓死・衰弱死させたり、病気のまま放置するという例が跡を絶たない。繁殖をさせなくなった親犬について、販売、譲渡等を含む終生飼育の責任を課すべきである。
- 無秩序で乱脈な過剰繁殖により、動物の遺伝性疾患や感染症などが広がっているが、ペットショップで販売される動物が、どこの繁殖業者のどのような施設で生産され、どのような経路で飼い主の元に渡るのかがまったく不明であるため、問題の解決がたいへん困難となっている。トレーサビリティを確保し、ペットを購入する飼い主が、繁殖業者の飼養状況を確認したり、病気などがあった場合に連絡をしたりできるようにするとともに、劣悪な繁殖業者が淘汰されるようにする必要がある。
(7)飼養施設の適正化
- 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」などを遵守しておらず近隣住民から悪臭や騒音などの苦情が寄せられる動物取扱業者が数多く存在する。行政が具体的に改善指導できるよう、また、近隣住民に説明がしやすいよう客観的な数値基準をつくるべきである。とくにアンモニア濃度、騒音、温度、湿度など、器具を使って計ることができるものについて、多角的に数値基準をつくるべきである。
- ケージは、正常行動を可能とする大きさを原則とし、体長、体高、成長速度、習性等に応じた大きさ、高さとする。犬については少なくとも体長の3倍以上の幅であること。また、ケージ飼いの場合は、必ず1日1回以上は適度な運動をさせるべきである。
- ケージの段重ねは、上段の糞尿の飛沫等が下に落ち、衛生上の問題がある。清掃等においても十分に行きとどかない可能性があるので、原則として制限するべきである。
- それぞれの種にかなう適正湿度、温度、照度等をガイドラインで定める。
- 動物の飼育施設ではそれぞれの種の習性、生態に適う環境エンリッチメントを行うこと。(例:ガム、止まり木、おもちゃ、ハムスターの回転車など)
- 適正規模で営業することは動物福祉につながり、また多頭飼育の崩壊を防ぐことにつながる。飼育者1人当たりの飼育頭数上限や、面積当たりの飼育可能頭数などの数値基準をつくるべきである。犬であれば成犬10頭に対し最低1名の飼育員を置くこととするべきである。
- 動物取扱業の施設の運営事項に、災害発生時の動物救護対策(飼育動物の避難や逸走防止等)と感染症予防対策を書き込む必要がある。2006年に大阪で人畜共通感染症が集団発生した際には、感染症発生時の緊急隔離施設や管理治療マニュアルがないため、大変な混乱と被害の拡大を招いた。人の感染症および動物由来の感染症、家畜伝染病については法律があるが、ペット間の感染症の防止のための法律はない。パルボ、ジステンパ ー、猫エイズといった、劣悪な多頭飼育施設で発生する可能性が高い感染症についての対策を施設運営事項に盛り込むべきである。また、感染症の発生時に、安易なペットの遺棄や処分が行われないようにすることも必要である。
- 動物取扱業者の施設が劣悪であるとパルボなどの感染症が発生することがある。業者はそのような場合、感染した犬を行政に持ち込んだり、遺棄したりする。行政の施設に犬が収容されるとパルボにかかるというのは、業者持ち込みに由来しており、一般譲渡は困難になることが多い。行政の引取りを、悪質業者の「不良在庫処分」とさせてはならない。業者から引き取る場合は、一般飼い主からの場合より引き取り手数料を高く設定するなどの措置が必要である。
- 「動物愛護及び管理に関する法律施行規則」の第3条第2項の8に、「構造及び規模が取り扱う動物の種類及び数にかんがみ著しく不適切なものでないこと。」とあるが、これではよほど不適切でない限りはよいという誤解を招くおそれがある。「著しく」という文言を削除するべきである。
(8)動物取扱業の業種追加の検討
- さまざまな態様の動物取扱業が増えており、新たな業種の追加を行うことは不可欠である。また、動物の繁殖、販売、流通に関する業態については、いっそうの規制強化が必要である。
- 動物取扱業の数が増えることに伴い、取り締まりに従事する動物行政の強化を図る必要がある。
- 動物愛護団体や、教育・公益目的で動物を取扱う施設などは、実態把握や法令の周知徹底を目的とし、法令違反があった場合には立入できるような規制とするのがよい。
- 業の態様に応じて、業種の区分けをすることで、多様化している動物取扱業の問題に対処する必要がある。
(8-1)動物の死体火葬・埋葬業者
- 動物愛護管理法は、生命尊重の理念ということを大きな目標にしており、この生命倫理という観点からすると、動物の死体を礼節を持って取り扱う葬送は動物愛護管理法に含むことが可能である。
- 動物の死体火葬・埋葬には法律がなく、実態すら把握できていない状態である。まずは動物取扱業に含めて実態把握、法令の周知徹底などを行うべきである。
- 動物愛護管理法に含める場合、生体の取扱いに関する現行基準を適用することはそぐわないため、別途、新しい区分や基準・指針を作ることが必要である。
- 死体に明らかに動物虐待と疑われる事例が発見された場合、警察、行政への通報義務を課すべきである。
- 関連法(廃棄物処理法、悪臭防止法、大気汚染防止法、ダイオキシン対策等特措法、など)の法令の遵守義務を課すべきである。
(8-2)両生類・魚類販売業者
- 両生類については、爬虫類の取扱業者とほぼ重複しており、業追加による行政負担の増加はあまり見込まれない。両生類については動物取扱業に含め、取扱業者はその適正な飼育方法について、顧客へ説明をするべきである。
- 魚類の中でもペット用の鑑賞魚を扱う業者については、動物取扱業に含めるべきである。金魚すくいまで規制はできないという意見を聞くが、生命尊重の観点から、金魚であっても使い捨てのおもちゃではなく、命ある存在であることを周知徹底させるべきであり、動物取扱業者としてその適正な飼育方法について、顧客へ説明をするべきである。
- 魚類は、愛護動物(動物愛護管理法44条の対象動物)ではなく、動物取扱業が取り扱う対象動物(動物愛護管理法第10条の対象動物)に含めることが妥当である。
- 両生類、魚類の取り扱い業を含めることは、生物多様性の保全の観点からも重要な施策である。生物多様性国家戦略の「動物の愛護と適正な管理」の項目には、「一部の劣悪な動物取扱業者や無責任な飼い主による不適切な飼養が社会的に問題となったり、遺棄又は逸走した飼養動物が野生化し、在来種を捕食することなどによって、自然生態系に悪影響を及ぼしたりすることなどが問題となっています。」と明記されているので、これに対する施策が必要である。
- 両生類、鑑賞魚が遺棄・放流された場合、河川や湖沼を管理するのは陸上以上に難しい。河川の生態系に悪影響を与えたり、感染症を拡散させ、水産業へも打撃を与える可能性がある。両生類・魚類の取扱業者にも動物取扱業の研修を課し、また顧客に対して適正飼養や遺棄・放流の禁止等を啓発普及していく社会的責任を課すべきである。
(8-3)老犬・老猫ホーム
- 老犬・老猫ホームは飼い主より対価を得て、終生適正に飼育することを契約する営利目的の業であり、客観的に適正に飼養されることが求められるため、動物の所有権を得ているとしても、登録制とし、実態把握や法令の周知徹底などをするべきである。
- 今後、この種の業は増加していくと考えられ、概念としては終生預かってもらうという意味でその費用を飼い主が支払うが、犬猫の所有権が業者に移るため、元の飼い主が会うことを断られる例がある。これは里親詐欺の場合も同様で、譲渡を受けたあと、実験動物として売り払うケースもある。犬猫を預けたあと、追跡ができなくなることが問題であり、現に社会問題化している。動物取扱業として登録制に含めるべきである。
- 終生預かってもらうために、その必要経費を飼い主が支払い、時には医療費の負担もすることがある。明らかに、保管業の形態であると考えられる。終生保管の義務を定めることで、元飼い主に無断で、勝手に遺棄したり、殺処分、売買することは契約違反とするべきである。
(8-4)動物の愛護を目的とする団体
- 一時保護や譲渡等の目的で動物を飼養保管等している動物愛護団体・グループ・個人の活動は、非営利で公益的な活動であることにかんがみ、一般の動物取扱業とは別枠での登録制とするべきである。
- 地域の動物行政に協力をして譲渡活動をしている動物愛護団体・グループ・個人は、登録制とし、社会的に認知されるべきである。
- 譲渡等のために実際に動物を飼養保管等している動物愛護団体・グループは登録制とし、複数の家庭で動物の一時預かりをしている動物愛護団体・グループの場合はその本部を登録制とするのがよい。
(8-5)教育・公益目的の団体
- 教育・公益目的での動物の飼養保管施設は、一般社会に適正飼養の啓発普及を行う立場にあり、その飼養施設はモデルでなければならない。一般の動物取扱業者とは異なる区分で、登録制とするべきである。
- 動物を飼養している小中学校その他の施設は、地域の動物行政への届出制とするべきである。
- 動物を飼養している動物専門学校は、動物取扱責任者を育成する機関であり、法令遵守の周知徹底のために、登録制とするべきである。
- 盲導犬、警察犬その他の使役犬の育成施設は、動物を適正に取り扱う社会的責任があり、登録制とするべきである。
今回の意見募集の対象には含まれていないが、動物取扱業の登録に加えるべき業種がある。
(8-6)実験動物繁殖販売施設
- 実験動物の繁殖販売施設は多頭飼育施設であることが多く、またペットの繁殖業者と遵守すべき事項は何ら変わりがない。周辺環境への影響その他の観点からも登録制とする必要がある。
- 猫を捕獲して実験用に販売する業者がいたり、犬猫の繁殖業者が売れ残った個体を実験動物業者に販売していたりするので、実験動物販売業者も登録制とするべきである。
- 野生動物(ニホンザルなど)を捕獲して実験用に販売している動物取扱業者は、登録制とするべきである。
(8-7)野生動物の捕獲販売、運送業者
- 野生動物も捕獲された時点で人の占有下に入り、動物愛護管理法が適用される。野生のイルカ等を捕獲して、水族館等の展示用に販売する業者を動物取扱業に含めるべきである。また、海外から野生動物を輸入するために輸送する業者を動物取扱業に含めるべきである。
(8-8)行政の犬猫収容施設
- 動物愛護センターなど行政による犬猫の収容保管施設は、動物の適正な取り扱いに関して一般のモデルとなるべきであり、自ら基準を遵守することを示す意味で登録制とするべきである。
- 行政の施設でも、ふれあいや展示、譲渡等の動物取扱に関する事業が行われており、動物取扱業に相当するので登録制とするべきである。
- 動物愛護センター等の運営や動物の保管に関して、すでに業者委託が進んでおり、今後は愛護団体や業者への委託が増えていくことも考えられるため、登録制とするべきである。
(9)関連法令違反時の扱い(登録拒否等の再検討)
- 動物取扱業は、さまざまな動物関連法に広く関わっていることが多い。動物に関わる個別法は数多くあり、法律ごとに業の登録等の規制をしていくことも考えられるが、もっとも一般消費者や飼い主と近いところにある動物愛護管理法で、関連法違反時の取り扱いを定めることが最も効果的である。
- 悪質な犬の繁殖・販売業者に対して、行政が何回改善指導しても改善されない場合、動物愛護管理法ではなく狂犬病予防法(登録、注射義務違反)で告発するケースがある。狂犬病予防法で有罪となった場合には、登録取り消しとするべきである。
- ワシントン条約、種の保存法等に違反して動物を違法に販売していた動物取扱業者が、逮捕された翌日でも店の営業を行っている。法令違反が明らになった時点で登録取り消しとするべきである。
- 鳥獣保護法に違反して国産の野鳥を密猟者から仕入れて販売しているペットショップ等は、法令違反が明らかになった時点で登録取り消しとするべきである。
- 特定外来生物法に違反した場合、法令違反が明らかになった時点で登録取り消しとするべきである。
- 登録の取り消しは、動物愛護管理法第12条(登録の拒否)及び第19条(登録の取消し等)の両条文に登録拒否の要件として規定するのが妥当である。
- 動物愛護管理法第25条の周辺の生活環境の保全に係る措置に関連する法令として、悪臭防止法、騒音防止法、化製場法、感染症予防法等がある。「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」第12条に、化製場法、悪臭防止法、騒音防止法等を書き込むのが妥当である。
(10)登録取消の運用の強化
- 悪質な動物取扱業者に対して、行政が何回となく改善指導していながらまったく改善されないまま数年を経るケースがある。行政の指導回数に上限を設け、同時に改善の期限を定めて、その間に改善されない場合は登録取り消しや(営業停止等の)罰則を科すなどの処分を行うべきである。
- 立ち入り調査表を環境省が例示し、全国一律で作成し、項目ごとに評価制とする。たとえば50項目中半分以上が基準以下という場合、改善勧告を行う。
- 動物愛護担当職員に司法警察権を持たせることを検討するべきである。
- 動物取扱業者が登録取り消しになった場合、別の行政区で別の事業所名にして、再登録する可能性がある。金融商品取引法のように、登録取り消しになった事業者名を公表するべきである。
- 動物取扱業者の営業が破綻した場合、残された動物の保護が税金や寄付金、ボランティアの労働で賄われている理不尽な現実がある。動物取扱業者に保険制度や供託金制度などの整備と加入を義務づけることにより、動物取扱業者自らの負担によって、廃業、登録取り消し、営業停止時に残された動物を適正に譲渡等できるように定めるべきである。
- 動物愛護管理法第46条の動物取扱業の違反行為に対する罰金刑を高くする。現行の30万円を、特定外来生物法並みに、懲役3年、罰金300万円に引き上げる。
(11)業種の適用除外(動物園・水族館)
- 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」や「展示動物の飼養及び保管に関する基準」を遵守していない動物展示施設が散見される。また、(社)日本動物園水族館協会の加盟園館であっても種の保存法等の違法行為で摘発された施設がある。動物園・水族館と呼ばれる施設全体を対象として、一律に動物取扱業の適用除外を行うべきではない。
(12)動物取扱責任者研修の緩和(回数や動物園水族館・動物病院の扱い検討)
- 動物園・水族館の職員や動物病院の獣医師であっても動物愛護に関する知識を有しているとは限らない場合があることから、一律に責任者設置義務規定を外すことはできない。
- 業種ごとに研修内容を細分化する必要があるが、その場合、専門的な知識が必要となり、事務も増え、担当職員に負担がかかることになる。研修を外部機関に委託し、内容の充実を図るとともに担当職員が他の愛護行政に専念できるようにすることが望ましい。
- 「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」などを遵守しておらず近隣から苦情が寄せられる動物取扱業者が数多く存在する。研修内容の理解度を確認する試験を行い、基準点を超えることを義務づけるなど、研修内容を強化し、意義のある研修にするべきである。
(13)販売時説明義務の緩和(犬猫以外の小動物等での説明義務項の緩和の検討)
- 安価なハムスターや小鳥などが粗雑に扱われたり、不適切な飼い方をされることが多々ある。値段や動物の大きさ等に関わらず、どのような小動物であっても適正に飼育するよう飼い主に説明することは動物取扱業者の義務であり緩和するべきではない。
- 昨今、エキゾチックアニマルを飼うことが一般的になりつつある。それらの生き物は性成熟時の体長・体重、寿命、適正な飼育方法などが一般に知られていないことが多い。中には数メートルの大きさに成長するものや、数十年生きるもの、特殊な環境や餌を必要とするものもいる。飼育者が個体の情報や適切な飼育方法を理解せずに飼い始めることは虐待や遺棄につながる。遺棄による在来種への影響の問題も各地で発生しており、販売時の説明義務は緩和するべきではない。
- ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)やフェレットなど、外来生物法の「要注意外来生物リスト」に掲載されている生態系に悪影響を及ぼしうる生き物などについては、販売時説明を強化することが外来種対策としても重要である。
- 「展示動物の飼養及び保管に関する基準」に「野生動物等を家庭動物として販売するに当たっては、特に第1の2の定めに留意すること。」とある。第1の2には「管理者は、施設の立地及び整備の状況並びに飼養保管者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する展示動物の種類を選定するように努めること。また、家畜化されていない野生動物等に係る選定については、希少な野生動物等の保護増殖を行う場合を除き、飼養及び保管が困難であること、譲渡しが難しく飼養及び保管の中止が容易でないこと、人に危害を加えるおそれのある種又は原産地において生息数が少なくなっている種が存在すること、逸走した場合は人への危害及び環境保全上の問題等が発生するおそれが大きいこと等を勘案しつつ、慎重に検討すべきであること。」とある。そもそも野生動物を家庭動物として販売することは問題が多く望ましくない。野生動物を販売する場合には、飼育の難しさ、危険性、起こりうる問題などもあわせて説明することを義務とするべきである。
- 販売時の説明で、特に重要な箇所が産地の明記であるが、これを単に「静岡県」といような地名ですませているところがある。トレーサビリティの確保のためには、繁殖業者の登録情報を顧客に知らせることが必要である。
- 購入した個体に、遺伝的な疾患があったとか、感染症にかかっていたというような場合は、追跡調査ができることが必要で、この部分は現在以上にしっかりと説明するべきである。
(14)許可制の検討(登録制から許可制に強化する必要性の検討)
- 指導・改善勧告などの基準を具体的にして行政の判断を容易にすることにより、登録取り消しなどの実行力を増し、許可制と同様の効果が得られるようにするべきである。
- 繁殖業者については、感染症や遺伝病の蔓延に対する責任強化の観点から、特別に規制を強化するべきである。欧米諸国のように個人のライセンス制にすることも検討されるべきである。
(追加の意見)動物取扱業者の登録簿の公開について
- 市民が、ある動物取扱業者が登録業者かどうかを確認するためには、動物取扱業者登録簿を閲覧しなければならない(動物愛護管理法第15条「都道府県知事は、動物取扱業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。」)。しかし、所轄自治体の窓口まで出向かなければ閲覧できないとしている自治体がほとんどである。本来、同法第15条の規定は、一般市民が誰でも動物取扱業の合法性及び登録事項を確認できるための制度として新設されたはずであるが、現実には有効に機能していない。同法第15条の「閲覧」を「公開」に改正し、動物取扱業者登録簿をインターネット等で公開するべきである。